以前の書籍を読んだ記事にも書きましたが、その書籍中では Cognito を使いましたが、ユーザープール (User Pools)については紹介だけで、チュートリアルはありませんでした。
このユーザープールが気になり、簡単なサンプルを作って試してみましたので、メモにまとめておきます。
Cognito ユーザープールとフェデレーティッドアイデンティティの関係について
最初、ドキュメントを呼んでも、すっきりしなかったので、不正確かもしれませんが、自分なりに理解したユーザープールとフェデレーティッドアイデンティティの関係についてを書いておきます。
Cognito のドキュメントを読むと、ユーザープールは、独自で認証を実装するときの Users テーブルのようなものだとわかります(ディレクトリサービスといったほうがいいのかな)。 ユーザーの登録・管理・認証を提供してくれるサービスというところですかね。
もちろん、ユーザープール単独でも使えるのですが、Cognito フェデレーティッドアイデンティティ (Federated Identities) とつなげることで、
- ユーザープールで認証
- フェデレーティッドアイデンティティ で AWS アクセス用のロールを割り当て
- 割り当てられたロールを使って、AWSのサービスへのアクセスを行う
ということが可能になるようです。
で、わかりにくかったのが、このフェデレーティッドアイデンティティ との連携というところです。
最初の自分の理解だと、フェデレーティッドアイデンティティというと外部のIDプロバイダ(facebookやGoogle+)を利用するためのサービスだと、捉えていました。 でもこれって、外部のIDプロバイダだけじゃなくて、Cognito ユーザープールをIDプロバイダとして利用することができるようです。 そのあたりが分かると話がしっくりきます (あらためてドキュメントを読んでみると、Cognito User Poolsも使えるよとしっかり書ていますね)。
また、フェデレーティッドアイデンティティを利用するためには、 Identity Pools (IDプールとも書かれてます)を作成する必要があります。 ここでも、『プール』、というキーワードが出てくるので、ややこしく感じますね。前述のユーザープールとは別物ですので、気を付けましょう。
このIDプールは、ユーザープールを含むIDプロバイダのアカウントに対して紐づけられる、Identity ID を管理するためのものです。この Identity ID に対してawsのロールを割り当てることになります。 こうすることで、IDプロバイダのアカウントを直接扱わなくても、認証したユーザーを一意に特定・管理できるということのようです。
ネットの記事によっては、ユーザープールの利用という話題について、フェデレーティッドアイデンティティを使う、という表現ではなく、Identithi Pool を使う、とのみ書いている場合があります。 どちらの表現でも、やってることは同じなので、わかってしまえば問題ないのですが、よくわからないうちだと、2種類の用語が出てくるけど、どう違うんだ?となってました。ご参考までに。
Cognito ユーザープール と Identity Pools の作成
上記の関係性さえわかれば、ユーザープルおよび Identity Pools の作成は、今回のようなサンプルだとたいして難しくありません。
ユーザープールの作成と Identity Pools の作成は、下記記事などを参考にしました。
Amazon Cognito User Poolsを使って、webサイトにユーザ認証基盤を作る - Qiita
Cognito User Pools x ログイン認証 x API認証 - Qiita
ユーザープール作成時の注意点としては、『アプリクライアント』を追加する際に、『クライアントシークレットを生成する』のチェックボックスを外すことを忘れないでください(JavaScriptからはクライアントシークレットが利用できないためです)。こちらのドキュメントもご参考に。
ブラウザでの動作サンプル
Identity Pool の作成まで問題なく終われば、コンソールでの作業は終わりです。 次は、ブラウザから、Cognito ユーザープールを利用するサンプルを作ります。
JavaScript からCognito の機能を使うためには、
- aws-cognito-sdk.js
- amazon-cognito-identity.js
の2つのSDKが必要です。下記のGitHubページからダウンロードできます。
とりあえずローカルにダウンロードして、それを指定します(このサンプルを試した時点では v1.19 でした)。
また、ログイン時のサンプルでは、AWS SDK for JavaScript も必要になります。 このGitHubのページにあるように、scriptタグで指定すればOKです。
ダウンロード版がよければ、こちらのページからデフォルトビルドのダウンロードなどを選択すれば、ダウンロードページに行けます。
サンプルコードの動かし方
なお、参考までに、以下で載せているサンプルをGitHubにあげておきましたので、もし興味があればご参考にしてください。
ローカルで動作させます。サーバーはpythonを利用しています。 (インターネット上のサーバー上が良ければ、S3などで適当にホスティングしてください。)
./run.sh
なお、動作環境は、
- Windows 10 Pro, 1703, 64bit
- Bash on Ubuntu on Windows, 16.04.2 LTS
です。
サインアップ
サインアップ用ページはこんな感じにしました。
コードはこんな感じですね(app.jsというファイルにまとめて書いてます)。
'use strict' var upsample = {}; upsample.poolData = { UserPoolId: 'ユーザープールのID', ClientId: 'アプリクライアントのID' }; upsample.UserPool = new AWSCognito.CognitoIdentityServiceProvider.CognitoUserPool(upsample.poolData); upsample.signup = function() { var email = $('#inputEmail').val(); var username = $('#inputUserName').val(); var password = $('#inputPassword').val(); if (!email | !username | !password) { return false; } var attributeEmail = new AWSCognito.CognitoIdentityServiceProvider.CognitoUserAttribute({Name: 'email', Value: email}); var attributeList = []; attributeList.push(attributeEmail); var message_text; upsample.UserPool.signUp(username, password, attributeList, null, function(err, result){ if (err) { console.log(err); message_text = err; } else { var cognitoUser = result.user; console.log('user name is ' + cognitoUser.getUsername()); message_text = cognitoUser.getUsername() + ' が作成されました'; } $('#message').text(message_text); $('#message').show(); }); }
ユーザープールを設定した際に、デフォルト設定のままだと、e-mail のみが必須入力となっているので、ユーザー名、パスワード、メールアドレスを指定しています。
サインアップの確認
画面はこんな感じ。
コードはこちら。
upsample.verify = function() { var username = $('#inputUserName').val(); var vericode = $('#inputVerificationCode').val(); if (!username | !vericode) { return false; } var userData = { Username: username, Pool: upsample.UserPool }; var message_text; var cognitoUser = new AWSCognito.CognitoIdentityServiceProvider.CognitoUser(userData); cognitoUser.confirmRegistration(vericode, true, function(err, result) { if (err) { console.log(err); message_text = err; $('#message').text(message_text); $('#message').append($('<a href="resend.html">再送信</a>')); // 再送信リンクの表示 } else { console.log('call result ' + result); message_text = cognitoUser.getUsername() + ' が確認されました'; $('#message').text(message_text); } $('#message').show(); }); }
サインアップページからサインアップの確認ページが表示されないのはご愛敬にしてください。
ログイン
ログインページはこんな感じです。
コードはこんな感じ。
upsample.login = function() { var username = $('#inputUserName').val(); var password = $('#inputPassword').val(); if (!username | !password) { return false; } var authenticationData = { Username: username, Password: password }; var authenticationDetails = new AWSCognito.CognitoIdentityServiceProvider.AuthenticationDetails(authenticationData); var userData = { Username: username, Pool: upsample.UserPool }; var message_text; var cognitoUser = new AWSCognito.CognitoIdentityServiceProvider.CognitoUser(userData); cognitoUser.authenticateUser(authenticationDetails, { onSuccess: function(result) { console.log('access token + ' + result.getAccessToken().getJwtToken()); AWS.config.region = 'ap-northeast-1'; AWS.config.credentials = new AWS.CognitoIdentityCredentials({ IdentityPoolId: 'Identity Pool の ID', Logins: { 'cognito-idp.リージョン名.amazonaws.com/ユーザープールID': result.getIdToken().getJwtToken() } }); AWS.config.credentials.refresh(function(err) { if (err) { console.log(err); } else { console.log("success"); console.log("id:" + AWS.config.credentials.identityId); } $(location).attr('href', 'mypage.html'); }); //console.log("id:" + AWS.config.credentials.identityId); //$(location).attr('href', 'mypage.html'); }, onFailure: function(err) { alert(err); } }); }
もし、ログイン後、AWSのサービスにアクセスするなど、Identity ID が必要になるならばここでidentityIDを取得することができます。 上記のサンプルだと、コンソールに出力してみて確認しているだけですが。
AWS のコンソールから確認すると、
のように、IDがちゃんと割り当てられているのが分かります。
マイページ
ログインに成功するとマイページが表示されます。
コードはこんな感じ。 現在のユーザーとセッションを確認して、セッションが有効であれば、ユーザー情報を表示しています。
upsample.checkSession = function () { var cognitoUser = upsample.UserPool.getCurrentUser(); if (cognitoUser != null) { cognitoUser.getSession(function (err, sessionResult) { if (sessionResult) { var attrs; cognitoUser.getUserAttributes(function (err, attrs) { if (err) { console.log(err); return; } $('#username').text('Username:' + cognitoUser.getUsername()); for (var i = 0; i < attrs.length; i++) { console.log('name:' + attrs[i].getName() + ", value: " + attrs[i].getValue() ); if (attrs[i].getName() == 'email') { $('#email').text('Email: ' + attrs[i].getValue()); } } }); } else { console.log("session is invalid"); $(location).attr('href', 'login.html'); } }); } else { console.log("no user"); $(location).attr('href', 'login.html'); } }
ログアウト
upsample.logout = function() { var cognitoUser = upsample.UserPool.getCurrentUser(); if (cognitoUser != null) { cognitoUser.signOut(); location.reload(); } }
その他
実は、ログイン後、 Identity ID を取得するところでずいぶんはまりました。ようは、refreshメソッドを呼び出す必要があったんですが、それに気づかなかったのです。 ドキュメントのサンプルを見ると、ちゃんと書いてました。
きちんと読むべきですね。
あと、Identity ID (フェデレーティッドアイデンティティの Identity Pools の Identity ID)をコンソールで削除後、再度ブラウザからアクセスすると、『リソースがない』という旨のエラーで落ちることがありました。 調べてみると、 Cognito はlocalstorageを使っているようで、そのキャッシュが残っている関係で落ちるそうです。
とりあえず、ブラウザの履歴を削除して、再度アクセスすると問題なく動作しました。
ただこの場合、Identity ID の値は、削除前の値から変更されています。なので、Identity ID を削除する必要があり、かつ、新旧のマッチを取る必要がある場合は、自分でなんとかしないといけなさそうですので、気を付けましょう。
参考
Cognito, Lambda, API Gateway のサンプル。Reactで作ってるので、React分かる人にはよいかも。
Cognito User Pools x ログイン認証 x API認証 - Qiita
Cognito利用時のログインの流れの図がわかりやすい
[ Serverless ] Cognito、S3、Lambdaで認証機能付きのWebサイトを作ってみました - Qiita
コード全般は下記記事を参考にしました。
AWS SDK for JavaScriptを使ってブラウザーからCognito User Poolsへサインアップしてみた | Developers.IO
AWS SDK for JavaScriptでCognito User Poolsを使ったログイン画面を作ってみた | Developers.IO