昨年10月頃に購入した、 QNAP TS-251+ にやっとUPSをつないだので、その経緯をまとめてみました。
QNAP の NAS は USBでUPSを接続して、簡単に停電時の電源断などの設定ができます。このとき、自分をマスターにして、ネットワーク経由で他のNASをUPSと連動させることもできます。1台のUPSに複数の機器を接続しているときに有効ですね。ちなみに、他社製のNASでも類似の機能はよくあります。
なので、TS-251+ にUPSを繋げて、既存のNETGEARのReadyNASと連動させればいいんじゃないの?と簡単に考えて、設定したのですがこれがどうもうまくいきません。 久しぶりにドはまりしました。何とかして連携させるようにしたので、その顛末をまとめておきます。
の前に、やりたいことをまとめるとこうなります
同じUPSについないでいる2台のNASを連動させたい
- UPS : APC ES 550G
- QNAP TS-251+
- NETGEAR ReadyNAS Ultra2
ところで、NAS の UPS 機能、自社シリーズしか対応していないというのが多いような印象ですが、これなんとかならないですかね? > 各メーカーさん
NUTについて
ReadyNAS (Ultra2) は古い機種なので、同じようなことで悩んでいる先人がきっといるはず、ということで、ググってみると、一応それなりに情報が出てきました。 基本的には、QNAP も ReadyNAS も NUT (Network UPS Tools) というのを元に、これらの機能を実現しているようです。NUT自体はオープンソースのようです(ライセンスGPL2、こちらで言及)。
なので、NUTの設定さえなんとかなれば、なんとかなるんじゃないかという甘い期待を持ちつつ、いろいろと調べていきました。
実現方法
どちらのNASも一方をマスターにして、その他のNASをスレーブ(ネットワーク経由でUPSを監視)として動作させることができます。 結論からすると、今回の場合、最終的に実現したのは、
- QNAP : master
- ReadyNas : slave
として動作させることでした。
基本的な設定方法としては、
http://www.ryanbibbey.com/2014/10/26/setup-nas-remote-ups-monitoring/
に従っています。
QNAP 側の設定
まず、UPSを TS-251+ に接続します。 この状態で、NASにログインすると、外部機器が接続されました』というダイアログが表示されます。
『外部デバイス設定を表示する』を選択するとUPSの設定画面が表示されます。 正しく接続できていれば、画面下部に、UPSのバッテリー残量などの情報が表示されます。
表示されていない場合は、接続に問題ないか、TS-251+ で使えるUPSかどうか、などを調べてみてください。
まずは、TS-251+ 側でUPSを設定します。
このとき、必ず『ネットワークUPSサポートを有効にする』にチェックを入れて、通知先になるNAS(スレーブとして動作するReadyNAS)のIPアドレスを入力しておきます(ちょっと面倒ですが、GUIからは、個別のIPアドレスでの入力になります)。
次に、SSH経由でログインします。NUT関係の設定は、 /etc/config/ups にあります。 upsd.users ファイルを開き、masterに接続する際のユーザー情報を修正します。
[admin] password = 123456 allowfrom = localhost actions = SET instcmds = ALL upsmon master # or upsmon slave
とある、allowfromを
allowfrom = ALL
のように、ローカルホスト外からでも接続できるように変更しておきます。
設定を変更したら、
upsd -c reload
として、変更後の設定を読み込ませておきます。
ReadyNAS (Ultra2) 側の設定
まず、SSHでログインします。
ReadyNAS のNUT関係の設定は、 /etc/nut にあります。 upsmon.conf ファイルを開き
MONITOR UPS@localhost 1 monuser pass master
の行を
MONITOR qnapups@ts-251+のIPアドレス 1 admin 123456 slave
と変更します。
『qnapups』がUPS名で、QNAPの /etc/config/ups/ups.conf で定義されている名前になります。 『admin 123456』がネットワーク経由で接続する際のユーザー名とパスワードで、QNAP の /etc/config/ups/upsd.users で定義されています。
QNAP側のUPSの機能として、これらの名前を変更することができないようです。なお、ReadyNAS側は、UPS名が UPS で固定です。これが、メーカー間の連動ができない一因ですかね。
次に、 /etc/init.d/readynas_startup を開いて
if [ "$ENABLE_REMOTE_UPS" = "1" ]; then if [ -s /etc/frontview/ups.conf ]; then . /etc/frontview/ups.conf UPSID="`upsc UPS@$UPS_SERVER 2>$DBG|awk -F': ' '/ups.mfr:|ups.model:/ { if($1==\"ups.mfr\") printf $2 \" \"; else print $2; }'`" if /sbin/upsmon -p &>$DBG; then echo "${UPSID}!!OK" >/var/log/frontview/ups.log else echo "${UPSID}!!FAIL" >/var/log/frontview/ups.log fi else echo "Unknown UPS!!FAIL" >/var/log/frontview/ups.log fi fi
の部分を
if [ "$ENABLE_REMOTE_UPS" = "1" ]; then if [ -s /etc/frontview/ups.conf ]; then . /etc/frontview/ups.conf # change for qnap nas #UPSID="`upsc UPS@$UPS_SERVER 2>$DBG|awk -F': ' '/ups.mfr:|ups.model:/ { if($1==\"ups.mfr\") printf $2 \" \"; else print $2; }'`" UPS=`awk '/^MONITOR/ { print $2 }' /etc/nut/upsmon.conf` UPSID="`upsc $UPS 2>$DBG|awk -F': ' '/ups.mfr:|ups.model:/ { if($1==\"ups.mfr\") printf $2 \" \"; else print $2; }'`" if /sbin/upsmon -p &>$DBG; then echo "${UPSID}!!OK" >/var/log/frontview/ups.log else echo "${UPSID}!!FAIL" >/var/log/frontview/ups.log fi else echo "Unknown UPS!!FAIL" >/var/log/frontview/ups.log fi fi
と変更します。
(たぶん)ReadyNAS起動時に、 upsc を使って、接続先となるUPSの情報を取得して、/var/log/frontview/ups.log に書き込んでいる処理になります。 この際に、UPS名が固定だったのを、設定ファイルの内容を反映するようにしました。
このままでは、リモートUPSの設定が有効ではないので、 /etc/default/services を開いて
ENABLE_REMOTE_UPS=0
を
ENABLE_REMOTE_UPS=1
と変更します。 また、 /etc/frontview/ups.conf を開いて
UPS_SERVER= ts-251+のIPアドレス
と、リモートUPSサーバーのIPアドレスを指定しておきます(upsmon.conf のIPアドレスと同じです)。 なお、下記設定ファイル
- /etc/nut/upsmon.conf
- /etc/default/services
- /etc/frontview/ups.conf
は管理画面から設定を行うと書き換えられるので、その点には注意してください。
ここまで、設定したらいったん再起動します。 設定に問題がなければ、ReadyNAS の管理画面にログインすると UPS のアイコンがグリーンに点灯していると思います(マウスを重ねるとバッテリー残量などの情報も見れます)。
ここまでくれば、最後は動作テストです。 UPSの電源ケーブルを抜いて、しばらく待つと、TS-251+, ReadyNAS Ultra ともにシャットダウンしました。問題ないようですね。
実は、現在手元にあるNASだと、最初に示したリンク先の設定方法(/etc/init.d/ups-monitor を使う方法)では、GUIのアイコンにUPSの情報が反映されませんでした。 一連の動作を見ていたら、/var/log/frontview/ups.log が正しく作られないようです。 詳細なところは不明だったのですが、上記の readynas_startup スクリプト中に ups.log を作成するところがあったので、ここを修正したら、動くようになったという次第です。
(参考)うまくいかなかった方法など
上記とは逆に、
- QNAP : slave
- ReadyNAS : master
で構成することも考えられます。ネット上にもいくつか参考となる情報があり、
https://forum.qnap.com/viewtopic.php?t=81908 https://forum.qnap.com/viewtopic.php?f=182&t=60166
上記の方法でやろうとしたのですが、今のReadyNAS には、dummy-ups ドライバが入っていなくて断念しました。
nasxxx:/etc/nut# ls /lib/nut/
hidups newhidups snmp-ups usbhid-ups
nasxxx:/etc/nut#
なお、dummy-ups ドライバーを使う場合は、下記の様に起動に失敗するときがあるそうです。
http://serverfault.com/questions/655797/nut-ups-dummy-driver-in-repeater-mode-for-synology-nas
次善の方法として、upsutilを切って、upsmonで起動する というのも試しました。 upsmonを起動できるとあるので、upsutil をkill後起動してみたが、 いつの間にやら、upsutilのプロセスが立ち上がってました。
https://xn3.wiki/qnap/qnap-upsmon http://www.mtom.cz/url/Linux/QNAP+a+NUT
あと、upsmonについては起動できているようで、マスター側(ReadyNAS側)のログに接続成功が出ていたのですが、QNAP側のGUIにはUPSのステータスなどが表示されませんでした。 ということで、この方法は断念しました。
なお、参考までに、upsutilをapcupsdに入れ替える記事というのがあったので、
http://itarou.blogspot.jp/2010/05/ts-419papcupsd.html
これを参考にして、 upsutil を upsmon に入れ替えれば実現できるかもしれません(やってないのでわかりませんが)。
その他にも、TS-251+ では docker/vm が動かせるので、 USB パススルーを使って仮想マシン側にUPSを管理さえればいいんじゃないか、とも思ったのですが、どうもうまくUSB(UPS)のパススルーが設定できなかったので実現できませんでした。
(参考)バージョンなど
QNAP TS-251+ NUT 2.6.5 Readynas Ultra2 NUT 2.0.5
ReadyNas 側の設定内容
- 設定ファイルの場所:/etc/nut
- UPS名 (ups.confのセクション名): UPS
- ユーザー定義 (upsd.users) : monuser, pass
QNAP側の設定内容
- 設定ファイルの場所:/etc/config/ups
- UPS名 (ups.confのセクション名): qnapups
- ユーザー定義 (upsd.users) : admin, 123456